No.1352314244
俺は、泥のような眠りに落ちていた。
夏はあまり好きではないが、夏の夜はそれなりに好きなのだ。
日中の蒸し暑さ、酷暑に比べ、空調が効いた部屋で睡眠を貪るのは、ちょっとした贅沢な気分を味わえる。
しかし、寝入っていた俺の意識に、何かの音が聞こえてきた。
何かが定期的に、一定のリズムを以て軋む音。
眠気に抗えない魅力を感じたが、普段耳にしない音に嫌な予感がして、眠気で朧気な意識を奮い起こして目を醒ます。
そうして、目を醒ました俺の眼に映り込んだのは、俺のPCデスクの椅子がくるくると、結構な勢いで回っている光景だった。
そして、その回転を為しているのは、座面に座ったもちもちとしたモノ――DOROだ。

No.1352314249
一体何なんだ。寝起きで頭が上手く働かない。
ベランダへ続くサッシから見える外の様子は、闇に沈んでいる。
夜明けの早い夏ですら、まだ外が明るくなっていないということは、おそらく四時ぐらいだろう。
眠気と意味のわからなさで、上手く頭の回らない俺を他所に、DOROはこちらを気にすることも無く、軽快に椅子を回していた。
PCのモニタには、動画サイトが映っている。
どうやら、料理系の配信者か動画作成者の動画を見ているようだ。
そもそも何故こいつは、平然と俺の部屋に居るのだろう。
寝る前に戸締まりは、確認したはずだ。
つまり就寝前には、DOROはこの家には居なかった。
だが、そんな自衛策など何の問題も無いように、DOROは我が物顔でPCを使っていた。
……まあ、これまでにもそんな事があったものだから、自分のアカウントを使われるのも嫌なので、DORO用に作ったPCアカウントをきちんと使っているようではあったが。
だが、アカウントを作ってやった事は別にDOROに無断侵入を許したわけではないのだが。
No.1352314274
眠気で、まだ胡乱とした思考能力でそれを眺める俺。
DOROは椅子をくるくる回しながら、いつも通りの何も考えていないような、あるいは遠くを見ているような表情で、動画を視聴している。
動画を見るなら、回らない方がよくないか……?そんなあたり前のことを思った。
寝床から立ち上がり、DOROに話しかける。
「それじゃよく見えないだろ」
手を伸ばして、回る椅子を手で掴んで止めようとした次の瞬間。
もちもちとした手が、回転の勢いをつけた速度で俺の手をはたいた。
大して力も入って無さそうなDOROの手の動きは、俺の体勢を崩して尻もちをつかせる程には強かった。
「ニャーン」
DOROは感情のない鳴き声を、こちらに放ってきた。
どうやら勝手に止めるなという抗議らしい。
「マジで何なんだよ…」
床に座り込んだまま、俺は頭を抱える。
No.1352314282
すると、不意に椅子の回転音が止まった。
顔を上げると、DOROはPCデスクの上にあった、マグカップに入った飲み物――確認していないが、確実に俺の家の冷蔵庫のものだろう――を飲んでいた。
PCモニタの中では、料理動画が終わっていた。
DOROは、もちもちとしながらも器用な動きで、キーボードとマウスを操作して次の料理動画を再生している。
そう言えばこいつ、何故か調理能力は高かったな……。
そんな事を思っている間にもDOROは、いまいち感情の読みづらい薄紫の瞳を画面に向けたまま、椅子の回転を再開させていた。
料理動画でDOROが料理をマスターしたら、それは俺も食えるのだろうか。
それともいつも通り見せつけられるだけで、俺は食べられないのか。
眠気は、いつの間にか吹き飛んでいた。
床に座り込む俺と、椅子に座って回転をするDORO。
そして窓の外の景色は白み始めていた。
――DOROと過ごす、町田の夏の一日が始まる。
No.1352315382
DOROはさぁ…
俺のこと好きなの?嫌いなの?
No.1352317112
ニャーン(あなたを抱きしめるDORO)
No.1352315687
あなただけには悪辣なDORO
No.1352316169
マグカップがディスプレイの後ろに置かれてるけど取りづらくないのかな
No.1352316631
ニュッと手が伸びる(反対側の)
No.1352317699
藤沢の早朝。
まだ街が湿った静けさに包まれている時分、俺は玄関先でDOROを支えていた。
足取りはふらつき、紫の瞳は半ば閉じている。肩に絡みつくように寄り添っていたのは毒DOROクラゲだ。
無数の触手が俺とDOROを交互に支え、泥酔の帰途を導いていた。
なんだか肌がピリピリする
No.1352317790
畳に転がすと、DOROは一度だけ「ニャーン」と掠れた声を漏ら落ちゆらゆらモチモチと台所へ行き、冷たい水を一気に飲み干す。
勢いよくコップを置くと、いつもの定位置、座布団にどっかり腰を下して丸まる。
何事もなかったように。
その脇で、毒DOROクラゲが
「ポシュッ…シュパフフ…」
と独特の声を発する。
言葉ではない。
だが身振り手振りで、やろうとしていることは明確だった。
自ら鍋に入り込み、俺に調理を促す。
No.1352317846
鍋に火を入れる。台所に潮の匂いが立ち込めていく。
朝日が障子を透かし、部屋の隅を淡く染める頃には、潮汁が完成していた。
毒DOROクラゲは触手をひらひらと振り、まるで「DOROによろしく」と告げるように、音もなく部屋を滑るように去っていった。
俺は小皿に汁を取り、そっと口へ運んだ。
その瞬間、視界が遠のく。
口中に押し寄せるのは、ただ「海」だった。
No.1352318002
打ち寄せ砕ける岩礁。色とりどりの蓬莱が如きサンゴ礁。底しれない深淵の海底。氷海の冷たさ。荒れ狂う波濤。豊かなるケルプの森。すべてを飲み込む大海嘯。
海原そのものが奔流となり、俺という器を呑み込み、矮小な自我を溶かし、原初の胎内へと還していく。
アルファでありオメガ。生命の始まりであり終わり。
俺は陸にいながらにして溺れていく。
気づけば昼下がりだった。
俺は立ったまま気を失っていたらしい。
No.1352318075
テレビの前ではDOROがNHKの昼番組を眺めながら、鍋ごと潮汁をすすっていた。
御椀を使うこともなく、豪快に。
ズルズル、ドロドロ、ゴクゴクと。無表情のまま。
まだ日は高い。何を始めるにしても遅くはない。
俺は改めて台所に立ち、自分とDOROのための昼飯を用意することにした。
ちょっと口がピリピリ腫れてるが気にならない爽快さだ。
あの日以来、毒DOROクラゲの潮汁を口にすることは、二度となかった。
No.1352318093
病院じゃなくてよかった
No.1352321426
毒DOROに攻撃されつつDOROを支えるあなた(指揮官)
これもしかして異常なのはあなた?
No.1352321676
DOROにいくら酷い目に合わされてもDOROに優しい異常者(あなた)
No.1352321761
DOROなりの愛情表現だからな
引用元: 【https://www.2chan.net/】

管理人
コメント
毒doroクラゲ…久々に出てきやがったなw
途中送信しちゃった…潮汁の意味が最初わからなかったけど、しじみ汁的な物か?
ってことは、DOROと俺はどっかで飲みまくってたのか…?
もうすぐ町田の夏も終わると思うとなんか切ないな
ある週末の夜、俺は意を決してアヒージョ作りに挑戦。テレビで見たら結構簡単そうに作れるので興味があった。冷蔵庫には買ってきたエビ、マッシュルーム、ブロッコリー、鶏肉、ニンニク、唐辛子がスタンバイ。近所のパン屋からフランスパンも買ってきた。
ネットでレシピを調べ、オリーブオイルを鍋に注ぎ、いざ調理開始。まずはニンニクをスライスするのだが、上手く均一な厚さにならない。テレビだと綺麗にできてたのになぁ…。
とはいえ、多少バラバラでもいいか・・・と自分に言い聞かせていると、玄関のドアを開けて誰かが来た。来客の予定は無い。
DOROだった。戸締りを忘れていたか?と思うほど、いつもドアを何らかの方法で開けて入ってくる。まさかアヒージョを作っているのを察知したのか…?
「ニャーン」と短く鳴く。食わせろって事なんだろうか・・・。でも初挑戦の料理だから上手くいくかはわからない。結局、ニンニクは焦がしてしまうし、食材は生煮えが怖いので煮込み過ぎてしまい、食材に火が通り過ぎて固くなってしまった。
「うわぁ、やっちまった…」俺は心の中でため息をつくが、なんとかアヒージョは完成した。
見た目は、正直あまり良くない。焦げたニンニクの残骸が浮かび、エビや鶏肉は固い。しかし、味は悪くない。DOROも何も言わず、バクバクと食っているし、不満は無いのだろう。
そして、ニンニクの香りと鷹の爪のピリッとした辛さが効いて、フランスパンも進んだ。けどDOROがフランスパンを食いまくり、俺は半分ぐらいしか食えなかった。まじふざけんなよ…。
アヒージョを食い終わったDOROは座布団に向かい、ゴロリと昼寝を始める。相変わらずマイペースな奴だ。
しかし、アヒージョを作るのは簡単だと侮っていた。実際は結構苦戦する所もある。今度はちゃんと作れると良いが、オリーブオイルをかなり使うので気軽には作れそうにない。