No.1319877403
月曜日の夜。空気は湿気を含んで重たく、身体の芯までだるい。
職場でのあれやこれやを思い出す気力すらなく、俺は靴を脱ぐなりそのまま床に倒れ込んだ。
夕飯を作る気力も、残っていなかった。
……弁当を買いに行こう。
あたたかい唐揚げ弁当と味噌汁、それさえあればいい。
そう思って玄関に向かうと――すでに、いた。DOROだ。
白く、もちもちした身体。
ぬめっと光るようなピンクの髪。
紫の瞳。
そして、こちらを見上げる無言の圧。
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ついてくるのかと問いかけるも、もちろん返事はない。
だがその目は無言のふてぶてしさを放っている。
抵抗してもムダだと悟った俺は、DOROを黙認して弁当屋に向かう。
静かな夜道。DOROは変わらぬ速度で隣を歩く。
ずっと、ぴったりと。
そして、弁当屋に到着。
カウンターの前に立ち唐揚げ弁当を注文し、小銭を取り出そうとしたそのとき――ドンッと、俺の太ももあたりに白くてもちもちした重みがのしかかる。
DOROだ。
前足(のようなもの)で俺の脚を無言でぽんぽん叩いてくる。
横を見ると、DOROがレジ上のメニュー表をじっと見上げていた。その視線の先にあるのは――「焼きサバ弁当」。
No.1319878632
食うのかと問うも返答はない。
だが、そのじっとした視線は揺るがない。
もちもちした体が微動だにせず圧を放っている。仕方なく、俺は焼きサバ弁当も注文した。
店員は微笑しながら受注する。
DOROの存在には、もうこの街の人間は慣れているのかもしれない。
弁当を2つ受け取り、帰り道。
片方の袋をDOROに渡すと、意外なほど器用に背中でバランスを取って持ち始めた。
もちもちのわりに、歩く姿は妙に堂々としている。
俺の隣で、まるで「これが当然」とでも言いたげに黙々と歩くDORO。
その背中が、ちょっとだけ誇らしげに見えたのは――きっと俺が疲れていたせいだろう。
No.1319881008
最近のDORO文学の中でも個人的にかなり好きな一作だな
No.1319883973
DOROと生活してるのいいな
No.1319884655
電車を降り、会社の資料がぎゅうぎゅうに詰まった鞄を肩にかけたまま、俺はトボトボと住宅街の坂道を登っていた。
足は重い。頭は痛い。
上司の小言と未読のチャットと、何もかもがノイズみたいに心にこびりついていた。
何も考えず、ただ、帰るだけだった。
夜風もぬるくて、癒しにもならない。
ネクタイを緩めようとした、そのときだった。
突如、空が閃光に染まった。
音が体を包むように響く。
見上げると、街の向こうに大輪の花。
音がひと呼吸遅れて胸を打つ。
そうか、今日は花火大会だった。
すっかり忘れていた。
俺は少しだけ足を止めて、もう一発、空に咲いた花火を見送った。
そのとき、ふと左足に「もにゅっ」と何かがぶつかる。
DOROだ。
No.1319885217
もちもちとした白い身体。紫の瞳。
何を考えているかは分からない、でも、なぜかぴたりと隣にいた。
どうした?と問いかけても返事はもちろんない。
DOROは俺の足元に収まり、じっと空を見上げていた。
このタイミングで現れるなんて、もはや超常現象だ。
でも、もう慣れた。
俺はそのままDOROと一緒に、近くのコンビニへ向かう。
花火大会の人混みとは少しだけ外れた場所だったからか、店内は静かだった。
俺は缶のレモンサワーを、DOROは(なぜか)ミルクティーを見つめていた。
飲みたいのかと訊いてもDOROはうっすら目を細めるだけで何も言わない。
でも俺は自然と、レジに2本持って行っていた。
No.1319886189
店を出ると、ちょうど視界の先、建物と建物のあいだから、また一発、空に咲く大輪。
俺は近くの河川敷まで歩いて腰を下ろし、缶を開けた。
横では、DOROがミルクティーのストローを(どこからか)用意して、ぽすっと咥えている。
どちらも、無言。
でも、不思議と悪い心地ではなかった。
夜空に咲いては消える花の光を、ただ黙って眺めていた。何分経ったか分からない。
汗はひいて、缶の中も空になっていた。
DOROは相変わらず無言のまま、視線だけ空を見ている。
俺は、ちょっとだけ声に出して言ってみた。「……綺麗だろ?」
その言葉に、DOROは何も返さなかった。
でも一度だけ、視線が俺に向いて、それからまた夜空へ戻った。
それで、十分だった。
No.1319887642
切ない文体なの何なんだよ
No.1319888871
疲れ果てた人の前にふと現れては少しばかりの癒やしを与えてはまた消えていくそんな不思議な生き物がこの街にはいるのです
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体が重い。頭の奥がズキズキと波打っている。
喉も痛い。節々もだるい。
目を開けるのも、億劫だ。
何も食べる気が起きず、水を飲むのも忘れたまま、ただただ、布団の中でもがいていた。
一人暮らしの部屋は、やけに静かだ。
エアコンの音だけがぼんやり耳に響いている。
時間の感覚が曖昧で、夢と現実の境界もぼやけている。
このまま死ぬのだろうか、そんな弱音が、ふと漏れる。
体を横に向けようとして、ふと――もにゅっ。
No.1319901901
なにかが、そこにいた。
あたたかくて、やわらかくて、もちもちした感触。
恐る恐る目を開けると、そこにいたのは――DOROだった。
白くて丸くて、ピンク色の髪がふわりとかかっていて。
紫の瞳で、じっとこちらを見ている。
声は、もちろんない。
けれどその視線は、いつものようにふてぶてしく――でも、どこか優しかった。
おまえ、いつから──喉がガラガラで、声は出ない。
DOROは何も言わず、俺の枕元にもちもちと身体を預けていた。
まるで、そこにいることが当然であるかのように。
No.1319902238
その体温が、ほんの少しだけ伝わってくる。
冷たくもなく、暑すぎもしない。
不思議な温もり。
DOROは、動かない。
ただ、そこにいてくれた。
俺はまぶたを閉じた。
あのもちもちの感触と、ほんのりとした重みが、眠りへと導いてくれる。
息を吸って、吐いて、また吸って――ようやく、少し楽になってきた気がした。
隣にいるDOROは、たぶん、何もしない。
水も出してくれないし、おかゆも作らない。
No.1319903233
しかし不思議なことに――誰かが「いる」というだけで、こんなにも安心するものなんだと自分でも驚いていた。
ありがとう。
無意識にかすれた声をこぼしながら、いくらか楽になった体を再び微睡みに沈める。
外では風の音がしていた。
DOROは、それに耳を傾けるでもなく、ただ静かに、もちもちと、寄り添っていた。
No.1319902874 DORO本人には癒しを与えてる自覚なんてなさそう
引用元: 【https://www.2chan.net/】

管理人
DORO文学、完(多分
コメント
3行でお願いします
DOROは当然のように飯を奢らせて
DOROはいつもふてぶてしくて
DOROは気付いたら傍にいる話
毎日待ち望んでいる自分がいる
まだ中毒じゃない!
バランスを考えろバランスをーーー!
ドロシー様が絶望の淵に落としてきた食欲と思いやりこそがDOROなのか…
疲れた社会人に刺さるdoro文学
>DOROだ。
で登場するの好き
DORO文学はコラボで浮かれた気分をキュッと引き締めてくれる
もちもちと寄り添う、でいつもフフッとなる