No.1350172203
台風が近づいている。
浸水被害の恐れ、土砂崩れや停電など様々な被害が起こり得る災害事象だと言うことはわかっている。だが、どうしてか。
俺は子供の頃から台風が来るとわくわくしてしまうのだ。
台風が来る前兆となる黒い雲と強い風、そして町に徐々に広がる緊迫感。
この日常が非日常感に切り替わっていくのが、好きなのかもしれない。
学生時代も文化祭は当日よりも、準備が好きなタイプだったからなあ、俺。
まあ、俺がこうして暢気に台風にわくわく出来るのも、台風が来ても大丈夫なように働いてくれる方々がいるからなのだが。
農家さんやライフライン、インフラ保守関連の人達には下げた頭が上がらない
一応、非常持ち出し袋はつい先日、9月1日の防災の日に場所と中身はチェックしてあるから、何かあっても大丈夫だ。
さて、現実逃避はこれぐらいにしておこう…。
俺の家には、台風以上に差し迫った問題が発生しているのだ。
窓外に向けていた視線を室内に戻す。
すると目に入ってきたのは台所でもちもちと、そして機敏に動いている存在が目に入った
――DOROだ。
No.1350172255
DOROは朝早くパンパンに膨らんだビニール袋を手にやってきた。
ビニール袋を台所に置くと、勝手知ったるとばかりにビニール袋から大量のじゃがいもと、ひき肉、玉ねぎを取り出して調理を始めた。
もちろん俺は許可を出していないし、家に入れるつもりも無かった。
だがDOROは御意見無用とばかりに勝手に鍵を空けて、台所を占拠したのだ。
こいつに合鍵を渡した覚えは無いし、それらしきものを持っている様子もない。何故だ。
DOROはじゃがいもを茹で、玉ねぎとひき肉を炒め、茹で上がったじゃがいもを潰して、そこに炒めた物を混ぜ込んで行く。
何を作っているかは、料理は独身男の嗜み程度でしか無い俺でもわかる。
DOROはコロッケを作ろうとしている。
しかもマッシュしたジャガイモは、大きなボウルを3つに山盛りになるという個人宅では大凡考えられない量だ。
見ている間にも、DOROはひき肉と玉ねぎを混ぜ込んだマッシュポテトを、小判型に成形していく。
ふむ。とてもそんな作業が出来なそうなもちもちとした手で、上手くやるものだ。
「ニャーン」
その様子を眺めていると、DOROが薄紫の瞳をこちらに向けて鳴いた。
どうやら手伝えということらしい。
No.1350172399
そもそも『台風の日はコロッケ』というのは、元々某匿名掲示板で生じたネットミームらしい。
何故コロッケなのか、何故台風なのか。
その二つを結びつける理由も由来も何も無いとのことだ。
だが、今や日本人の結構な範囲に独り歩きしたミームのみが影響を及ぼしている。
一種の認識災害なのではないだろうか。
などと、どうでも良いことをつらつらと頭の中で弄びながら、潰したジャガイモを小判型にしていく。
こういう作業の時は手が慣れてくると、思考とは関係なく手が動くのだから不思議なものだ。
出来上がった上げる前のコロッケは、クッキングシートの上に並べられ、それがいっぱいになると台所から運び出され食卓の上に置かれる。
狭いキッチンには置く場所が無いし、食卓のある居間はクーラーがかかっているから粗熱を冷ましやすい。
一石二鳥というわけだ。
No.1350172446
黙々と作業を勧めていくと、相手がDOROであっても連携というか作業の連帯感のようなものが生まれてくる。
小判型を作るのは、DOROの方が早い。
だがクッキングシートを運び出し積み重ねるのは、俺の方が都合がいい。
シェフのDOROをスーシェフの俺がサポートするような構図だ。
「ニャーン」
……何で俺はこの得体のしれない生き物と一緒にコロッケ作りをしているのだろうか。
やがて全てのマッシュポテトは、揚げる前のコロッケへと加工された。
No.1350172532
コンロの前には、踏み台に乗ったDORO。
コンロには、油がたっぷりと注がれたフライパン。
DOROはボウルに入った小麦粉、溶き卵、パン粉を素早く小判型のジャガイモに付けると、油の中に投入していく。
フライパンからは、軽快な油の音と香ばしい香りのハーモニー。
俺はというと、その光景をボケっと眺めている事は許されなかった。
俺は俺でまな板の上で大量の千切りキャベツを作っていた。
「ニャーン」
DOROが鳴くと同時に、油から聞こえる音が少し変わった。
コロッケが揚がったのだろう。
皿――家にある食器のデカい皿から順に総動員令だ――に千切りキャベツを乗せ、DOROに渡す。
DOROは揚がったコロッケを皿に山盛りにしていく。
揚げ物とキャベツで皿の色が見えない!コロッケが7分に、キャベツが3分!
コロッケが7分にキャベツが3分だ!
どう考えてもDOROと俺では食べきれない量の気がするが、そうする間にもDOROは手際良くコロッケを揚げていく。
食卓の上のクッキングシートが減るのと引き換えに、コロッケと千切りキャベツが乗った皿が増えていく。
やがてクッキングシートが食卓から消え、食卓には山盛りのコロッケ皿が限界の量まで並べられた。
No.1350172632
コロッケを揚げ終わったDOROは火を落とすと、何故か玄関に向かって行った。
……どういうことだ?
あのDOROがコロッケを作るだけ作って終わり、などと言うことは絶対に有り得ない。
そしてその疑問はすぐに解決されることとなる。
DOROが玄関ドアを空ける。
外は既に結構な強さで雨が振り始めていた。
「ニャーン!」
DOROがいつもより通る声で鳴いた。
するとどこからともなく、一人、二人と次々にずぶ濡れのDOROが現れた。
こいつ、仲間を呼びやがった…!
俺は慌ててタンスからタオルを取り出して玄関まで運ぶ。
「お前らDOROの仲間のDOROだな?」
我ながら何を言っているんだという内容だが、ずぶ濡れのDOROたちは頷いて鳴く。
「ニャーン」
「だったらそのタオルを貸してやるから、そのまま風呂に行け。ずぶ濡れで家の中を歩くんじゃない!」
もちもちと仕草で野良DOROたちは頷くと、浴室にぎゅうぎゅうと詰め込まれるように入っていった。
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「ニャ~ン」
最初から家に居たDOROの鳴き声がすぐ側で聞こえ、振り向くと口に何かを突っ込まれた。
それはサクサクとしていて、それでいてホクホクとしていて、温かく美味かった。
出来立てのコロッケだ。
若干、口内と舌を火傷した気がするが、その甲斐はあるぐらいには美味いコロッケだった。
その後、風呂から上がったDOROたちと俺とDOROはコロッケパーティーを開催することになった。
――町田の台風の一日はこうして過ぎていった。
No.1350172917
町田はいつも楽しげだな
No.1350172810
お前…料理できたのか…
No.1350172929
炒飯はよく作ってたし…
No.1350173334
良い話だな
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なんかいつ死ぬのかとドキドキしてたけどハッピーエンドだな
No.1350175219
大作だけあって笑いあり涙ありの感動作だな
No.1350178113
食べてもお腹壊さない食べ物分けてもらってるの初めて見た
No.1350173944
分け与えてくれた…!?
No.1350173954
珍しく優しいDOROだな
No.1350174634
DOROがちゃんと食べさせてくれるしトイレに篭ることにもならないなんて
No.1350181383
コロッケ食わせてくれるとか優しい個体だな
いつもならコロッケ自分で食ってこっちには冷蔵庫にあったカニカマとかそんなイメージがある
No.1350188894
いつものDOROなら俺の金で作るしコロッケはくれないかくれても腹を壊す
No.1350175047
死んだり謎の奇病にやられたりするのは湘南だっけか
No.1350190512
手伝ってたからじゃない?
コロッケくれたのDORO1人…1匹で黙々とこなす感じだったら多分分けてくれない
No.1350190952
一緒に作ってくれたから相応の報酬をやるんだ絆が深まるんだ
引用元: 【https://www.2chan.net/】

管理人
ハートフルなほうのDORO文学
(サムネは生成AI使用)
コメント
地域猫みたいに個体差あるんかな
危なかった…ひき肉あったらコロッケ作ろうと思ってしまった。炒飯の作った時は次の日後悔したのだ。
リビング占領されてコロッケ一つも食えないの想像してたけど違った
AI君に頼んで作ってもらったマイルドコロッケを食べるDORO。そしてその横に…
揚げたてコロッケをDOROにあげた。
「めっちゃ熱いです」
・ジャガイモは皮をむいて小さく切って、10分前後塩ゆで、茹でてもしばらく水切りのため放置
・玉ねぎをみじん切り、これまたしばらく炒めて、色が変わったらミンチ投入
・ジャガイモを潰して、玉ねぎとミンチを炒めてるフライパンに投入して混ぜ混ぜ
・形整え、小麦粉つけて、卵つけてパン粉付けて揚げる
・キャベツとか添えるなら、千切りにして用意して盛りつけて出来上がり
何このクッソ面倒臭い料理!後片付けもヤバそうだし、スーパーで買った方が良いなこれ…
うろ覚えだけど、以前「夫がコロッケぐらい買わずに自作しろよ」って言われた女がキレてた話があったな
この作り方見たら、自作とか気軽に言えんわ
DOROフィギュアが大量に欲しくなるダイレクトマーケティング